1 名前:
◆GinGaOoo.. @銀河φ ★[sage] 投稿日:2013/06/28(金) 17:12:58.09 ID:???0
筒井康隆さん新作「聖痕」
思考と言語 実験二本立て
作家の筒井康隆さん(78)の新作『聖痕(せいこん)』(新潮社)は、性器を失った美少年の一代記だ。
古語や枕詞(まくらことば)を多用した文章でつづられる豊饒(ほうじょう)でたくらみに満ちた物語は、
昭和から震災後までの時代を味わい深く描き出す。
主人公の葉月貴夫は、幼くして事件で男性器を失う。美貌と裏腹に、恋愛や欲望に恬淡(てんたん)としたそのふるまいは、
周囲の心を乱していく。本作は、リビドーを持たない人間がどう成長し、生きるかということを考えた一つの“実験”でもあったという。
「僕は年を取ってもまだ欲望が残っているから、貴夫に感情移入して書くわけにいかない。思考実験だったんでしょう。
『聖心地(ひじりここち)』という言葉を使いましたが、完全な聖人では面白くないから、多少は反社会的なところも持たせました」
貴夫が没入するのは、繊細な感覚を生かした美食、美味の世界だ。
「絵画や音楽は性と結びつくし、触覚、聴覚、嗅覚も全部関係があるでしょう。純粋な欲望は、考えてみたら食しかなかった」。
リビドーやコンプレックスから解き放たれ、食を一筋に追求していく貴夫は、一種のカリスマへと成長していく。
もう一つ、試みたことがある。現代に日本語の魅力をよみがえらせようと、古語や枕詞を文章に多用した。
古語辞典をかたわらに、「ののめく」「転楽し(うただの)」といった言葉に思いを巡らす執筆作業は、作家の創造力を刺激した。
「文章に入れようとして古語を選ぶのか、古語を使うためにシチュエーションを作るのか。
両方やりましたが、思いがけない展開になったり、異化効果を生んだりして、小説に深みが出ました」と手応えを語る。
(>>2以降へ続く)
秋には79歳。ところが「どこも悪いところがない。家にいて書いているだけで、酒はがぶがぶ飲む、たばこは吸い放題。
一番悪いのはストレスだと思います」=鷹見安浩撮影
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20130618-951135-1-L.jpgYOMIURI ONLINE (2013年6月28日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20130618-OYT8T00578.htm2 名前:
◆GinGaOoo.. @銀河φ ★[sage] 投稿日:2013/06/28(金) 17:13:06.58 ID:???0
(>>1の続き)
擬古文調の貴夫の回想だけでなく、登場人物の会話も、基本的にカッコを使わずに文章の中に織り交ぜた。
会話のカッコは、「作者の意見」という意味を込めてあえて使った2か所のみだ。
「同じ段落の中で視点を変えるのは、本当は禁じ手です。でも、それはこれまでの小説作法でしょう?
僕は小説に作法はないというのが持論だから、自由にやったんです」
文芸誌「群像」で小説の書き方についてのエッセーを連載中。
「若い人たちにこういう書き方もある、これだけはやってはいけない、という遺言めいたものを書いておきたい気持ちになった」。
遺言という言葉を使いながら、昨年はライトノベルも発表し、今月下旬にはブログをまとめた書籍も刊行するなど、執筆意欲は衰えないように見える。
「長編を書き終わると何もなくなるから、しょっちゅう最後の長編と言っている。“セイコン”尽き果てました」と冗談めかしてこう続けた。
「僕の読者は、今度は何をやってくるかと待ち望んでいる。自分で面白がって書いて、読者を面白がらせて……。それが理想です」(文化部 川村律文)
(了)
筒井康隆『聖痕』|新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/book/314530/http://www.shinchosha.co.jp/images/book_xl/314530.jpg朝日新聞デジタル:文体の実験、伴走に感謝 筒井康隆さん「聖痕」を終えて - カルチャー
http://www.asahi.com/culture/articles/TKY201303170083.html笑犬楼大通り
http://shokenro.jp/shokenro/