1 名前:
yomiφ ★[] 投稿日:2013/04/22(月) 13:15:45.13 ID:???
蔵書を電子化する“自炊”を業者などが代行することを許諾する代わりに著作権使用料
を徴収するなどのルール作りを検討する「Myブック変換協議会」(正式名称:
蔵書電子化事業連絡協議会)が4月19日に初めてのシンポジウムを開き、自炊を
認めるためのルールのあり方などについて議論した。
著作者も出版社の編集者も本を愛する読者であり、読書の利便性を高めたいという
思いは一致していることを確認した一方で、著者同士や、著者と出版社の間で思惑の
違いがあることも浮き彫りに。また、著者・出版社側には自炊代行事業者への不信感も
強く、合意形成の難しさを感じさせる船出となった。
パネリストは、Myブック変換協議会会長で、同会の幹事団体・日本文芸家協会で
副理事長を務める作家の三田誠広さん、
同協議会統括で幹事団体・日本写真著作権協会常務理事の写真家・瀬尾太一さん、
日本書籍出版協会副理事長の金原優さん、日本漫画家協会の幸森軍也さん、
全盲の社会学者で、90年代半ばから“自炊”と音声読み上げによる読書をしていた
という静岡県立大学教授の石川准さん。東洋大学教授の松原聡さんがモデレーターを
務めた。
■出版社と著作者が一体となって仕組み作りを
蔵書を裁断・スキャンし、電子化する、いわゆる「自炊」は、著作物を利用する
本人が行う限りは私的複製に当たり、著作者の許諾を得ずに行えるが、
スキャン代行サービスを利用するなど、第三者が代行する場合、著作者の許諾を
得ていなければ、著作権侵害となる可能性が高い(「スキャン代行」はなぜいけない?)。
とはいえ、書籍の電子化のニーズが高まる中で自炊代行事業者の利用は増えており、
自炊代行は読書好きに欠かせないサービスにもなっている。
「これからのネット社会では、自炊のような“ささいな2次利用”が増えていくだろう。
いちいち許諾を求めるのは事実上、不可能だ」と三田さんは指摘。
Myブック変換協議会は、第三者による蔵書の電子化を、簡便に許諾できる仕組み
作りを目指している。
仕組みの案として三田さんは、2次利用したい人が簡単な作業で著作者を特定でき、
申し込める“書籍版JASRAC”のような、著作権集中管理システムを、瀬尾さんは、
著作者をリスト化して許諾の連絡を取りやすくしたり、読み終わった紙の書籍を
出版社に送ると、電子化ファイルがもらえる仕組みなどを提案。これらの仕組みを
動かす前提として、裁断済み書籍や電子化ファイルが違法に流通しないよう、
ファイルに複製者が分かるタイムスタンプを入れるといった工夫も必要と話す。
1冊当たりの2次利用許諾料について瀬尾さんは、「現状のスキームを基に、
邪魔しない金額で発展させる範囲内」が妥当だろうという意見。
「金額が一人歩きするのは困る」としつつ、あくまで一例として5円~50円程度を挙げる。
これほど低額だと許諾の仕組みを維持するコストをまかなえない可能性もあるが、
「その金額でやっていくとしたらどういう方法があるかは、後付けで考えるしかない」(瀬尾さん)。
提案された試案は、既存の書籍流通を壊さず、出版社に不利益をもたらさない
ことに配慮した内容だ。日本の著作権法上、出版社には著作権はないが、
「本を作ってくれたのは出版社」と三田さんは強調。「著作者と出版社が一体となって
新しい仕組みを作っていきたいと話す。瀬尾さんは「出版社としっかり話し合いをする
前に、著作者とどう歩み寄れるかは未知数」とし、まずは方向性とニーズを確認した上で、
進めていきたいという。
(>>2につづきます)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1304/22/news041.html2 名前:
yomiφ ★[sage] 投稿日:2013/04/22(月) 13:16:18.73 ID:???
■出版社が積極的になれるかは「条件次第」
著作者や出版社には、自炊代行事業者への不信感は根強いようだ。三田さんは、
文芸家協会の理事会でMyブック推進協議会を紹介した際、「ある著作者から
ずいぶんいじめられた」と苦笑し、スキャン代行業者に、書き込みをした本の
スキャンを頼んだ人が、書き込みなしのPDFファイルを受け取ったという例を紹介。
「預けた本が裁断されず、業者の手元に残っていることになる。業者は本を本当に
捨てているのか? なかなか信じられず、作家も感情的になる。今行われている
自炊代行事業者への裁判は、著作者がリスクを負いながら行っている」
出版協会副理事長の金原さんは、出版社の立場から議論に参加。
自炊代行業者が書籍を電子化し、元の書籍を裁断するのであれば
「出版社には実害はない」と認めつつ、「電子データは複製時に劣化せず、
瞬時に複製可能。複製がさらに複製を呼ぶ」ことを懸念。複製に許諾を求める仕組みを
作ったとしても、「日本国民に著作権に関するコンプライアンスがあるだろうか、
日本人のこういう問題に対する意識は非常に低いと思う」と心配する。
新たな仕組み作りに出版界が積極的になれるかどうかは、「条件次第」だと
金原さんは言う。「利用料がいくらになるのか。複製物を所有する方が、
再利用の条件を守ってくれるのか。利用者のコンプライアンスが守れるのか。
代行業者の意識もある」
さらに、出版社としては、個人の蔵書電子化だけでなく、企業内での著作物の
PDF化を含めた、包括的な電子化ルール作りを行いたいという。
「企業からは、業務資料のPDF化の許諾を早く出してほしいという要請を受けている。
個人の蔵書の電子化だけでなく、全体の整合性を保って電子化ルールを
作り上げないといけない。自炊代行だけ先行させると、ほかがうまくいかなくなるのでは」(金原さん)
■代行業者もテーブルについてほしい
パネリストは著作者、出版関係者が中心で、自炊代行業者は含まれていなかった。
瀬尾さんは、「自炊代行事業者は業界団体などを作り、『今まで騒ぎになっていたけど
失礼しました』と土俵に上がってくるタイミングでは」と呼びかける。
客席から質問に立ったインターネットユーザー協会(MIAU)の香月啓佑さんは、
「今回の議論に、自炊代行業者の協力は大切だ。代行事業者は、出版社ができない
ことをやってくれたイノベーター。代行事業者を悪者にする態度では、協力して
もらえないのでは」と意見。
今は「お互いになんとなく懸念や不信感があり、テーブルの上の食事に誰も
手を出せない状態」(瀬尾さん)だが、「テーブルについてもらわないと話ができない。
相手を信じず、懸念を基に議論していると一生進まない。せめて全員がテーブルに
ついて何かを始めるべき」(瀬尾さん)と呼びかけた。
(了)